最近は会計事務所も新卒採用や中途採用で未経験の方でもOKな募集も増えてきました。
会計事務所で働く事になったけど何も分からくて本当に大丈夫?
まぁ、今は物凄くPCが進化しているしね。
税法全く理解出来ていなくてもPCの指定する場所に数字入力すると決算完了するし。
とは言え、士業は知識でお金を貰う商売なので日々勉強の毎日です。
これから色々と学んでいかなければならない事はありますが、まずはここからと言う事で簿記の解説です。
日商簿記3級が必要な理由
新入社員の最初の仕事はおそらく会計伝票の入力です。
いずれはこの作業もPCアプリの更なる進化でなくなっていくと思うが、あと数年は必要な仕事でしょう。
会計ソフトに現金出納帳(場合によっては領収書)や通帳を見て入力する仕事ですが、今は簿記を全く知らなくても入力出来てしまいます。
いやいや大した世の中になったものだ。
科目なんて、これは備品かなー、これ飲食代だから交際費かなー程度の感覚で入力して頂いて全く構いません。
似たような仕分けがあるはずなので、昨年の元帳や前月の入力を参考にして行えば大体完了します。
要は現金と通帳の残さえ合ってればなんとかなります。
後は担当者がきちんと見て処理してくれるはずです。
単一仕分けの場合だとそれで構いませんが、複合仕分けになるとそうはいかないです。
固定資産の売却などの場合です。
現金の入金額と固定資産台帳の金額で差額が出てきます。
よくこの様な場面で質問を受けていましたが、
とりま、入金になった分資産減らしといて
と答えていました。
差額が売却益もしくは売却損になるのですが、簿記を勉強してないとここが分かりません。
仕分けが分からない度に人に聞いたり、調べていて入力が全く進まなかったら仕事にならないので簿記の最低限の知識は分かるようにしましょう。
以前、自分は仕分けが分からない度に聞いてくる新人さんがいたので、
科目が分からなかったらとりあえず“仮払金”で処理しといてー
現金と通帳の月次残をきっちり合わせといてね
と指示を出していたら、8割仮払金処理されていて泣きそうになりました。
これでは困るので、勘定科目と資産・負債・収益・費用が分かる日商の3級は勉強して欲しいです。
別に試験を受けて合格する必要はありません。
会計事務所に就職した以上最低限の仕事をスムーズに出来るようにするための自己のスキルアップの為に頑張って欲しいのです。
理解して入力するのとただ単に機械任せで数字を入力するのとでは訳が違います。
日商3級の簿記の知識があればそんなに困らず仕事が出来るはずですので頑張って下さい。
パートさんや入力専門の内勤で働くなら3級で良いと思いますが、担当を受け持って現場監査に行ったりするのなら次のステップまでしておく方が良いです。
現地監査に出るなら日商2級は必須
日商の2級まで勉強すると実際に実務で行う様々な場面に対応出来るようになります。
日商2級を合格するくらい勉強したなら現地監査の会計で困る事はほとんどないと思います。
以下、日商2級の勉強が実務でどの様に生きてくるのかザーッと解説します。
仕訳
日商2級の範囲で実務で良く使う主な仕訳は、
- リース取引(オペレーティング取引、利子処理等)
- 固定資産の処理(減価償却、圧縮記帳、割賦購入、売却、除却等)
- 有価証券処理(購入時、売却時の手数料処理等)
などが挙げられます。
この3つの取引は本当によく出くわします。
特に有価証券は最近はネットで売買出来るようになったり、銀行から信託で勧められて購入していたりとで意外と良くみなさんお持ちです。
固定資産は割賦購入かリースかの判断、補助金を使った圧縮記帳等がよく出てきます。
試験じゃなくて現場でですよ!
次に、期中の仕訳とは別に決済整理仕訳を学びます。
毎月ではなく期末にのみ行う仕訳です。
例えば棚卸の評価、減価償却費の計上・振替、引当金の設定・振替等です。
これらが何を意味する仕訳かを理解していると決算仕訳がスムーズに出来ます。
財務諸表の表示区分
会計ソフトを使って仕訳を入力していた場合、ソフトに勘定科目が設定されていない場合が多々あります。
その際、勘定科目を自分で作成して入力しないといけないのですが、2級まで勉強していない人は時々変な場所に勘定科目を作成してしまう事があります。
例えば、投資有価証券が無形固定資産にあったり、預り金が固定負債にあったりです。
クライアント先のPCでこの様に入力していてそれを銀行さんに提出していようものなら会計事務所のレベルを疑われます。
その様な事が無いようにきちんと勉強しておきましょう。
原価計算
日商2級では工業簿記で原価計算を学びます。
これは支払った経費を原価と販管費、変動費と固定費、直接費と間接費等に区分して計上し、製造原価の算定を行うため製造業や建設業の理解が深まります。
製造業や建設業は常に粗利を意識して仕事をしている業種なのでクライアントさんと会話する上でも理解しているのは必須とも言えます。
原価率の増減の数値を用いて昨年や前月より材料費が上がったのか下がったのか、人件費の増減はどうか等の報告を行います。
製造業はこの数字だけで会話するようなものです。
また、変動費・固定費を理解すると予算の作成を効率的に行ったり出来るようになります。
売上に対して変動費が何%で固定費は幾らだから来期の利益は…ってな具合にです。
厳密にはもっと細かく行わないといけないでしょうが、現場でザーッと説明する分には有効です。
損益分岐点の分析
これを理解して説明出来るようになっているのが一番デカい。
最近は計算自体は会計ソフトなり専用のExcelシートに貼り付けて分析表が完成するようになっています。
その報告書をクライアント先に渡した際に全く説明が出来なかったら話になりません。
売上・原価・変動費・固定費がどの様に変化した時どの位利益がでるのかを図で見て説明出来るようになります。
まとめ
電子帳簿保存法の施行により今年会計ソフトの進化が一気に進みました。
近いうちに会計ソフトの入力はなくなり、領収書を読み込むだけで自動で仕訳を行う日が来ると思います。
実際、一部の会計事務所ではもう実用化されてきていますが、まだまだ費用対効果が伴っていないのが実態みたいです。
従って、もうしばらくは手入力による会計伝票の入力が必要となっています。
中小企業の多くの場合、会計伝票の入力をするのは社長の奥様だったりで簿記を知らない人が行っています。
会計事務所の仕事のメインである外部監査はこの会計入力の確認が主になってきます。
日々の入力をその様な方たちが素人感覚で入力するので、それを訂正したりするのですが、こちらも同じレベルで行っていては話になりません。
会計事務所に就職したらまずは会計を完璧に出来るよう日商簿記の2級までは勉強してみる事をおすすめします。
出先で困って仕訳を電話で上司に聞くとかカッコ悪いし信用されなくなってしましますからね。
立派な会計事務所職員の道は始まったばかりですよ。
頑張って下さい!